振り返ると、キョロっと階段下に目をやった郁生くんが、「これ……」と何やらパンフレットを手渡してきた。
「なぁに?」
見ると、“匠のふる里・なないろの杜(モリ)”の文字が表紙にあり、
「トーコさん、こういうの好き?
和紙すきとか七宝焼きとか、もの作り体験出来る場所みたいなんだけど……ほらここ」
パンフレット中側の地図には、藁葺き屋根の家のイラストが並び、
“藍染めの家”
“蝋纈(ロウケツ)染めの家”
と、それぞれ書いてあった。
「染め物なんかも出来るみたいでさ。行ってみない?」
「楽しそう…!
へぇー、サンドブラスト、胡桃絵付けだって。色々あるね!
───あ、ねえ、これって県外にもあるよ」
興味津々にくるくるパンフレットを見ると、
裏側に姉妹施設“にじいろの郷(サト)”へのアクセスが表記されていた。
「こっちの方が色々な家があって大きいみたいだし、こっちに行かない?」
「………何に乗ってくの?」
「え? 車で」
「………誰の運転で?」
「え? あたしの………て、ちょっと、郁生くん───不安、とか思ってんじゃないでしょうね?」