───2階に上がりつつ、あたしはちょっぴり速くなっていた鼓動を落ち着けるように、胸を押さえた。


………隠さなきゃいけないことなんて、
周囲に誤魔化さなきゃいけないことなんて、

これからいくらでも増えてくる。


でも────………



例えば、親やおねーちゃんにバレたら?

今度はどうなるの?



郁生くんが言ってたように、誰かが血を流すような時代じゃないけど………



───あと1ヶ月ちょっとで同じ屋根の下なんて、ほんと自信ないなぁ。


だいたい、今回のことでも母親に「ヘンじゃない?」なんて言われちゃうなんて。



「────………」



元気………ない、か。


──『悩んでるような?』


そうだよね………



……郁生くんと、別に喧嘩してる訳じゃない。


けど………微妙にギクシャクした、変な空気なのは、確か。


原因は────………





「………あ、トーコさん待って」


階段をあがり、部屋に入ろうとすると、

───あたしを呼び止める声。