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「あぁ、そうだ───香子から国際電話きたよ」
大学祭が終わってから、1ヶ月ちょっとが過ぎた頃、12月ももうすぐ半ば───夕飯の後片付け中に。
母親がふと思い出したように言った、何気ない一言に、
あたしの胸がドキリと大きく反応した。
久々に聞いたその名前……自分の姉なのに、後ろめたさを感じちゃうなんて。
「……久しぶりじゃん。音沙汰なかったのに。なんだって?」
お皿を洗いながら、何でもない振りをするあたし。
「それが聞いてよ!
あのコってばさ、時差考えないで電話してくるんだからさ。
相変わらずすっとぼけてるったら」
「あー……おねーちゃんらしいね」
「もう一度一から子育てするってのに、しっかりして欲しいもんだわ。
海外で無事に妊婦生活送れてんのかしら?」
「そこは海外行こうが、妊婦だろうが、変わらないでしょ。
でも、おねーちゃんのことだから、なんとでもなってるんだよ、きっと」