「…………」
「それでも、失くせなかった。やっぱり大事なんだ。
………だから、雄仁、ありがとう」
そんな、あたしの突拍子もない感謝の言葉。
「……はっ…なんで俺にお礼? 何も出ねーぞ?」
雄仁は茶化したように答え───でも、ふっと目を逸らし、もう一度寝転んだ。
「……礼なんか言うなら、あの焼きもちやきに連絡してやれよ。
さっきの、絶対気にしてんぞ……ったく、世話の焼ける」
「……うん」
あたしは、雄仁が目を逸らすその一瞬、すごく優しい目をしたのを見逃さなかった。
………“ありがとう”は、いろんな意味。
あたし達の切れかけた糸を繋いでくれて、ありがとう。
認めてくれて、ありがとう。
いつも助けてくれて、ありがとう。
心配してくれて、ありがとう。
秘密を守ってくれて、ありがとう。
────あたしがおばあちゃんになっても、
こんな雰囲気でこの人とお茶飲んでられたらなあ、なんて。
ふと、そんなことが浮かんでいた………