「女子高生は“優しい”なんてうっかり言ってたけど、そーいや『“優しい”って字はついてねー』って自分で言ってたよね」


先にひょいひょいっと上がっていく雄仁に、あたしは文句を垂れながら、

うんしょうんしょ、と事務机から梯子に手を伸ばした。


「大学3年にして、ここに上がることになるとは……」


皆上がってたけど、いまいち自信なくて上がらなかったのに………。


「もうっ! 落っこちて、観察実習行けなくなったらどーする……わっ!」


出入口に手を伸ばしたところで、指が掛かりそこねて滑る。


「───……っぶねー」


そんなあたしの腕を、雄仁がキャッチした。


「……おまえ、体育の授業、壊滅的だったろ」


大学の小学校専攻の教科の、鉄棒やら跳び箱やらをやる授業を指してるらしい。


「うるさいな、真面目に再履修して、補習も全部出て、単位もらったよーだ」


「ぶはっ、体育で再履か、しゃーねーな」


雄仁が失礼にもあたしの黒歴史にウケながら、あたしをグイッと引っ張りあげてくれた。