「未桜が型抜きにハマり出したから、安西君と一ヶ谷君、他のお店回ってくるってさ」


“安西君”………。


なんか、郁生くんの名字が他のコから出てくるって新鮮。


あたしは家にいる時の郁生くんしか知らないけど、

未桜ちゃんや倉田さんとかと、高校生してるんだもんね。


不思議………てか、うらやましいような。


「あたしはさっきのお兄さんとしばらく話してたよ」


「あぁ、うちゅー人さん?」


「うん。なんかあのお兄さんさ、イケメンだし優しくていい感じ!

未桜のイトコのさ、シュウちゃんにちょっと感じが似てない?」


「えぇ? 似てるかなあ? シュウはさ……」


…………えっ?


二人の会話を横で聞きながら、あたしは面食らってしまった。


女子高生から見ると、雄仁って“イケメン”なんだ……へぇぇっ!?


しかも“優しい”って、……うーん、まあ、優しい、かな? けど……口悪いよ……?


その時───


「あ───トーコさん」


……郁生くんの声。


あ、戻ってきたんだ、と振り向くより前に───


新たな事件(?)が起こったのだ……。