「…………」
いつかのように、郁生くんの頬を挟んだあたしの手の甲に彼の手のひらが重なる。
「キスしたら────多分、もうトーコさんのこと、離せなくなる。
でも……そうなったら、前世(カコ)と同じ道をたどるかもしれない……
だって、許されない想い───許されない関係なのは、二度生まれ変わっても変わらなかった……」
「…………」
「幸せになってほしいって思うのに、“好き”って気持ちが抑えられない。
───これ以上苦しい想いをさせたくないのに、なんで手離せないんだろう……」
語尾の方は自嘲気味に囁いて、
あたしを包んでいたその手が離れていった。