「───また……謝る……」


そんな彼の頬を両手で挟み込むと、郁生くんは悲しそうに微笑んだ。


「なんか……もー、癖になっちゃってんのかも……」


「…………」


「…………」


目と目が合って───引力が働いてるみたいに、吸い寄せられそうになる。


「トーコさん………」


目を逸らせずにいると、郁生くんが静かに言った。


「───……“キスしたい”…て言ったら……怒る?」


心の中を見透かされたみたいで、


「なっ……なんで……聞くの?」


あたしは恥ずかしくなり慌てた。


「だって……」


「……だって?」


「“いい”って言われないと、出来ない」


「……なんで?」


「────戻れなくなる、から……」