真が何も言わず消えたのは、そんな経緯から……
あの政略結婚も、私───“澪”を守るため。
狂気の父から、逃すため………
どんな状況になっても、最期の最期まで真の愛は変わっていなかった……
「でも───澪を助けようと思ってしたことが、もっと深く澪を傷つけるなんて、思ってなかったんだ。
………例え殺されてもなんでも、這ってでも、澪の側に行けばよかったんだよね」
「────………」
言葉にならず、無言で首を横に振るあたし。
「………それなのに」
そんなあたしの髪に、顔を埋めた郁生くんが、
「生まれ変わっても身勝手な俺は、トーコさんを“好き”って気持ちが失くせない。
“抱きしめたい”って気持ちが抑えられない。
海の時も、迎えに行った時も───今も。
………ごめん」
泣きそうな瞳………。
見ると、郁生くんがあたしの涙が移っちゃったような顔をしてる。