「───昨日…さ……」


ややあって、郁生くんがぽつりと言いかけて口を噤み、


「……言いかけて、やめないで……なぁに?」


「………なんで、ゆーじんさんと……」


皆まで言わなかったけど、駅で雄仁に抱きしめられてたことを指してるんだろう。


「あれは……雄仁が、あたしをからかって……」


「ふぅん……」


面白くなさそうに、郁生くんが呟くから。


あれれ? もしかして、これって……


「郁生くん……もしかして、ヤキモチ?」


海に行った時の仕返しみたいに、郁生くんのセリフを真似て返してみたら。


「妬くよ……当たり前」


腕の力がぎゅっと強まった。


そんな彼の言葉に、恥ずかしさと嬉しさの反面、


「だって……昨日、『真っ赤』ってからかいながら、笑ってたじゃない」


ちょっと甘えつつ、すねた口調で反論すると、


「そこは、───演技力でしょ」


郁生くんは、小さく笑った。