「………なぁに…?」
まともに顔が見られなくって、
郁生くんを追い越し、前を歩いていると、
そんなあたしの背中に、郁生くんが
かすれたような声で言った。
「言葉にしたら……そしたら、信じてもらえるの?」
「信じる……って?」
どこまでも弱虫なあたしは、振り向けない。
「昨日、部屋を出ていく直前に……トーコさんが言ってたこと」
背中からあたしを追いかけてくる郁生くんの声。
表情は見えないけど、トーンで分かる……
「後ろめたさがあることは……否定出来ないけど……
澪への想いが揺らいだことは、ただの一度だってないよ?
こんな根本的な部分に疑問を持たれるなんて、思ってもみなくて、さ───かなりショック、だったんだけど……」