「失礼なー……」


もう…なんの気なしに、触れないでってば……。


予想外のことに顔が熱くなりそうで、

思わずおでこを押さえて、むーっとした表情を作ったあたしに、


「ねえ、トーコさん……」


郁生くんの、淋しげな瞳が刺さる。



………痛い。胸が痛いよ。

郁生くんにこんな表情させてるのは、弱虫なあたし。


昨夜、フラッシュバックしてしまった記憶への辛さから、口をついて出てしまった言葉は、なかったことには出来ない。


だけど───止まらなかったの。


郁生くん、なんで謝ってばかりいるの?

互いを求める気持ちが手離せなくて、私達は共に堕ちたはずなのに……


郁生くんが謝る度に、“後悔”を口にする度に、

真の想いが、愛が幻のように思えて、
前世(ミオ)が生きてきた全てが、嘘だったみたいで、

たまらなく悲しいよ………。