「───ここ……ボート乗れるんだって」
「……そうだね」
街灯に照らされているスワンボートに視線を遣りながら、あたしは小さく頷いた。
───ちょこっと間を置いて、
「……冬は……スケートリンクになるんだって。知ってた?」
「───……えっ!?」
意外な事実に、あたしは思わずうつむき加減だった顔を上げた。
………この池が、スケートリンクに??
「そうなの?? ……全然知らなかった…」
3年も大学に通ってるのに、全く知らなかった新事実。
ここ? どうやって、凍らせるんだろう??
その間、スワンボートは……とか考えていたら、
ぷっ…と、郁生くんがそんなあたしを見て吹き出した。
「……あれ?」
しばらくぽかん、としたあたし。
クスクス笑いの止まらない郁生くんに、ようやく真相が飲み込めて、
「もー……郁生くん、からかったでしょ……」
「だって」
郁生くんの人指し指が、あたしの眉間をつんってつっつく。
「トーコさんが、ずーっとここにしわ寄せてるからさ」