────どうしようもないループにはまっていたら、
「……トーコさん」
どこかで、郁生くんの声がした。
顔を上げると、改札側からあたしを見つけたのか、郁生くんがこちらに向かってくるのが見えた。
………うわっ。
手術する病院にでも、到着してしまったように、あたしの中に緊張が走る。
「───バイト、お疲れ様」
「うん……」
「バス、混んでた?」
「……うん」
真っ直ぐ視線をくれる郁生くんを見れなくて、うつむき加減のあたし。
「トーコさん、おなかすいてない?」
「……ううん」
「……どっかお店で話すのもなんだし……千ノ池(センノイケ)公園まで歩こっか」
「……うん」
妙な緊張に『うん』と『ううん』しか答えられないあたしに、郁生くんは小さく苦笑して、
「行こう」と歩き出した。