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───父上は母上をこの上なく愛していた。


どんなに周りの風当たりが強かろうと、
病弱で産後の日達が悪く、何年も郷に下がっていようと、

他に目もくれず、側室の一人も迎えずに。


その唯一無二の女性(ヒト)を失った日……私と真が死に追いやってしまった時から───父上の狂気が始まった。



まずは───私達の手引きをしたお豊とお悦を斬首にすると言い出した。


私と真に見せつけるように、私達二人をその場に引きずり出して。



しかし、死を目の前にしたお豊は、穏やかな目をして父上に言ったのだ。


『私は……私たちは、澪様の幸せを願って、お仕えして参りました。

………澪様の行く道は間違っていたのかもしれませんが、後悔はございません』



その言葉に、父上の顔が怒りとも嘲りともつかぬ表情で、見る間に歪んだ。


『………。なぜ、“死にたくない”と……“澪が憎い”と言わぬ!』