「助けてくれなかった……。
私は何度も穢された……でも、それでも真のことを信じて耐えていた……
それなのに───」
目の前で何かを言われている。
でも、今のあたしの耳には届かない。
「なぜ、何も言わずに何処かにいなくなってしまったの……?
真は───あなたは、穢れた私を……捨てたの……?」
意識が、何かに呑み込まれる。
暗い…暗い、底なし沼のように、じっとりとあたしを絡めとる。
倒れかけた身体を強く引かれた瞬間───あたしは意識を手離した……
そう、私を犯す黒い影────あれは、
母上を亡くし、悲しみと私達への憎しみに狂乱した父の姿だ……