「……あたし、あの、……ごめん、応えられない…よ? きっと、分かってると思うけど……」


あっけらかんと笑う雄仁に、あたしは弱ってしまった。


なんだか、申し訳ない気分になって……


だって、あの屋上の時、『自分にベタ惚れなオンナが好き』って言ってたじゃない。


ベタ惚れどころか、あたし……まだ、次の恋なんて考えられないよ?


なのに、いくら本人が「甘えろ」って言ってくれたからって、ほんとに沢山甘えてしまった───雄仁の気持ちも知らないで。


図々しいにも程がある。


「そんなの、おまえが気にするこっちゃねえよ。

ただ言いたくなっただけ───駄目?」


「駄目じゃない、けど……」


「ん。じゃあいいじゃん」


そのままあたしの手を引いて、駅に向かって歩き出すもんだから、

手を離すタイミングを失ってしまい……。


駅の改札でパスケースを取り出そうとして、ようやく繋いでいた手が離れ、

妙な緊張感から解放されたあたしは、思わずほっと息をついた……のも、つかの間。