「まぁさ、郁生くんが、おねーちゃん──親のところに行くって、言ってたから……

これからは、同じ屋根の下で暮らさずに済む──しばらくは、顔を合わせずに済む、てことも大きいかな?」


無理に笑顔を作って、顔を上げたら、


………雄仁が今までに見せたことのないような、すごく優しい瞳であたしを覗き込んで、こう言ってくれた。



「………そこにいくまでに、頑張ったな」


「────………」


───雄仁の、ばか。


「……こんな道端で、泣かさないでよ……うちゅー人」


滲んできた涙に俯いて、わざと悪態つくと、


「んじゃ、屋上でも行くか?」


あたしの頭にポンッと手のひらを乗せた後、

「ほら、どっかで水分補給すんぞ」と、あたしの手を引いて歩き始めた。


───郁生くんとは違う手のひら。


今は胸が痛くても、


忘れられる日が、きっとくる……



今のあたしは───そう願うことしか、出来ないんだ………