『心配すんな、大丈夫』


あたしの頭の中が透けて見えた、みたいな
………その言葉の意味するところ。


だって、未桜さんのお兄さんのお店は、

───郁生くんのバイト先。



あたしは、んーっと伸びをしてのんびりした歩調で前を歩く雄仁の背中に、


「…………。雄仁って、ほんと何も聞かないんだね。

雄仁の家で飲んだ時のことも、その後のことも、

───ナイトウォークの、屋上の時のことも………」


「なに? 俺に聞いて欲しくなった?」


振り返ったヤツは、いつも通りのちょっと意地悪い笑みを浮かべた後、


「……冗談。

───まぁ、どう転んでも辛くない筈ないしな。

おまえの態度や表情見りゃ、どんな想い抱えてるかくらい、解るさ」


「でも」と付け加えながら、雄仁はまたあたしの前を歩き出す。


「一つ救いなのは、………ナイトウォークの夜より、おまえ自身が多少なりと穏やかに自分に向き合えてそうってことかな」