……て、未桜さん……?


「彼女に、何を怒られたの?」


「うーん……まぁ、逃げたまま、綺麗に忘れられる恋はないってことをさ、改めて自覚させられたっつーかさ。

振ったのは……突然いなくなったのは、あいつだけど……怖くて会いに行けなかった。

近い大学にしたのは未練……でも、家を出たりしてさ。

───逃げてるうちは、終われない。

ちゃんと終わらなきゃ、次が始められないからな……」


懐かしいように、淋しそうに、切なげに、
そう言った雄仁は、

───次の瞬間、そんな複雑な表情を一掃して、


「まぁ、付き合わせて悪かったな。

お礼っちゃーなんだけど、夕飯にイタリアン奢っちゃるよ」


いつものトーンに、いつもの笑顔……それに、ほっとして、


「あはは、あたし何もしてないのに、気前いい。どこの?」


「女子高生の兄貴んとこ。あいつ、おまえに会いたいから、来いってさ」


それって───……


固まってしまったあたしを見て、雄仁があたしの背中を押すようにポンッと叩いた。


「───心配すんな。大丈夫だ」