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「……適当なこと、言っちゃいけないんじゃなかったっけ」
「ん?」
バスが来るまでにかなり時間があったので、
休憩と涼を求めて、住宅街のメイン通りまでの道を歩いている途中、
「あたしと、付き合ってなんかないのに……
おまけに、『お祝いに付き合え』って言ったのはそっちだし」
「……そこはつっこまないとこだろ、ったく……」
苦笑しながら、遠い何かを見つめるように、雄仁が続けた。
「あの人、俺の元カノ」
「………だろうね。
いくらあたしが鈍いからって、さすがに分かった」
「おまえにしちゃ、珍しい」と、雄仁が軽く茶化すのを、「余計なお世話」とあっかんべーで返して、
「……なんで、今……会いに行ったの?」
触れていいのか気になり、気遣わしげに、雄仁を覗き込むと、
雄仁から、予想もしなかった答えが返ってきた。
「あぁ、女子高生に怒られたんだよ」