1通目は、未桜さんから。
『おはようございます、杏崎です。本間さんにメアド教えてもらいました。
昨日は帰れましたか?』
心配して、メールをくれたようだった。
彼女との関係に不思議なものを感じながら、
『安西から、“ありがとう”ってメールがきたんだけど、いったい何にお礼を言われたんだか……』
郁生くんの名前を見ただけで、胸がぎゅっと掴まれたように痛くなる。
夢の中のような、遠くに思えていた昨夜の出来事が、現実味を帯びてきた。
“ありがとう”って………
考えようとして、……でも思考回路がすっかり停止してしまっていて。
返信内容さえも考えつかず、仕方なしにさっき着信したばかりの、もう1通のメールを開く。
2通目は、短く一言。
『遠慮なく呼べ』