★ ★
深夜の大学内で、
あたしを避けるように歩き出した、郁生くんの背中を追いかけながら────
「ねえ、なんで逃げるの?」
胸のドキドキが加速していく。
「逃げるよ! ───『離れたい』って言ったじゃん」
「だから、なんで?」
「……答えない」
「なんで?」
「だから……答えないってば。
あーもう! ……『なんで?』って聞くの、禁止!!」
耳をふさぐ仕草をする郁生くんに、
「じゃあ……どうして?」
「……同じことじゃんか───トーコさんの酔っ払い」
「うん、酔っ払い。……だから、答えて」
「答えない」
「じゃあ、止まって」
「ヤダ」
「郁ちゃん、ワガママ」
「……知らない。絡まないでよ、酔っ払い」
またもや、不毛な押し問答が続き………
「じゃあ、質問変える」