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深夜の大学内で、

あたしを避けるように歩き出した、郁生くんの背中を追いかけながら────


「ねえ、なんで逃げるの?」


胸のドキドキが加速していく。


「逃げるよ! ───『離れたい』って言ったじゃん」


「だから、なんで?」


「……答えない」


「なんで?」


「だから……答えないってば。

あーもう! ……『なんで?』って聞くの、禁止!!」


耳をふさぐ仕草をする郁生くんに、


「じゃあ……どうして?」


「……同じことじゃんか───トーコさんの酔っ払い」


「うん、酔っ払い。……だから、答えて」


「答えない」


「じゃあ、止まって」


「ヤダ」


「郁ちゃん、ワガママ」


「……知らない。絡まないでよ、酔っ払い」


またもや、不毛な押し問答が続き………



「じゃあ、質問変える」