「ねえ………」


ふと───思い出した光景。


「郁生くんの部屋にブレザー取りに行った時……

───あの時、郁生くんが“みお”…って呼んだのって……」


あの声……低く、深い響きで、


「杏崎未桜…さん…じゃなくて、……」


愛しそうに呼んだ、その名前────


「“澪(ミオ)”……って───私、だったり…した……?」



“みお”───そう、“澪”。


それが、あたしの前世の、本当の名前……



「────!!」


瞬間───郁生くんがフリーズして、


「……トーコさん………それ、反則………」


……あたしから、視線を逸らした郁生くん。


体育館の入口近くの街灯に照らされたその横顔が、かぁっ…!と赤くなった。