「……兄上が……」
そう切り出した郁生くん。
“兄上”って……前世の尊影兄様のこと…だよね。
「俺の立場だったら……そしたら、どうしてただろう、ってずっと考えてた。
きっと……自分の想いだけに囚われて、自分本意に動いたりしない。
どうしてあんなふうに……思いやれなかったんだろう?って」
ゆっくり顔を上げた郁生くんは、
「ずっと、憧れだったんだ───今でも……。
もし、相手が兄上だったら、あの時も今も違ったかもしれない……とか考えたり、さ」
自嘲気味な笑みに、胸が痛む。
そんなふうに、否定したりしないで。
あたしは──“郁生くん”だから、
私は──“真”だから、
あなたが、好きなのに………。