★    ★


───しばらく間があって……


「………ごめん」


郁生くんがもう一度静かな声で謝って───あたしの手をそっと離した。


「ごめん……あんな言葉で傷つけたい訳じゃないんだ。

結局……トーコさんのこと、巻き込んで───そんで、傷つけて悲しませることしか出来ないのは、俺の身勝手が原因……昔も今も……」


「…………」


そんなことを言って、しゃがみこんだ膝の上に両手をだらんと伸ばし、その間に顔をうずめ、

郁生くんは大きなため息をついた。


「───はー……やっぱり、どんなに頑張っても、あんなふうに大人にはなれない……」


───初めて聞く、弱りきったような声。


ポツリ…ポツリと、呟きが落ちる。


「……あんなふう…って……」


「ずっとさ───後悔、してたんだ」


“後悔”───その言葉に、あたしの胸がドキリと反応した。


幾度となく、郁生くんの口からこぼれていた謎解きのような言葉。


「……なに…を……」


知りたい……聞かせてほしい、郁生くんの心の内を。