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───しばらく間があって……
「………ごめん」
郁生くんがもう一度静かな声で謝って───あたしの手をそっと離した。
「ごめん……あんな言葉で傷つけたい訳じゃないんだ。
結局……トーコさんのこと、巻き込んで───そんで、傷つけて悲しませることしか出来ないのは、俺の身勝手が原因……昔も今も……」
「…………」
そんなことを言って、しゃがみこんだ膝の上に両手をだらんと伸ばし、その間に顔をうずめ、
郁生くんは大きなため息をついた。
「───はー……やっぱり、どんなに頑張っても、あんなふうに大人にはなれない……」
───初めて聞く、弱りきったような声。
ポツリ…ポツリと、呟きが落ちる。
「……あんなふう…って……」
「ずっとさ───後悔、してたんだ」
“後悔”───その言葉に、あたしの胸がドキリと反応した。
幾度となく、郁生くんの口からこぼれていた謎解きのような言葉。
「……なに…を……」
知りたい……聞かせてほしい、郁生くんの心の内を。