「───!!」
な……なんで捕まえるの!
心臓がもたないから───離してほしい!!
「……なんで、“トコちゃん”モード……」
さっきの一喝に、クスクス笑った郁生くんが───
「……ごめん…」
………何に対する『ごめん』なの…?
むしろ、謝るのはあたし……。
頬からそっと引き離したあたしの両手を、自分の手のひらで包み込んだまま、
「“トコちゃん”には……敵わない……かな」
そう一人言のように呟いた彼は、
「……少しだけ……昔話…していい…?」
あの時───……二人で行った海で話した時のような、
懐かしさと切なさを滲ませた、遠い……穏やかな目をして、
そう、言ったんだ……