またまた立ち止まってしまったあたしに、郁生くんが声を掛けた瞬間───


  ぺちっ!


あたしは傘を持っていない方の手で、軽く郁生くんの腕に反撃した。


「んー? 怒ってんの??」


「上手くまとめたように見せかけて、結局“単純”って言ってるんじゃない!」


「あぁ……バレた??」


ぺろっと舌を出し、またクスクス笑う郁生くんを、

足早に置いていこうとするあたし。



「また雨降ったら迎えに来るよ」
と追い掛けてくる郁生くんに、

「けっこーです」とツンツン答えながら、

あたしは内心すこーしだけ困っていた。


まったく……外国人じゃあるまいし、そんな簡単に“かわいい”とかいうセリフ吐くんじゃないよ。



免疫のない叔母をからかうなんて、

───チュー坊のクセにっ!!