「……なんて……ごまかしてばかりいたら、いつまで経っても、何も変わらないかな……」
十六茶はコトリ、石段に座ったままのあたしの脇に置かれ、
郁生くんは、あたしから目を逸らし───静かな声で言った。
「正直いうとさ? ───俺が……離れたいんだ……トーコさんから」
「────………」
拒絶の言葉……直接目の前で言われると、キツイ…な。
「……余計なこと思い出したから?
ずっと忘れたままだったら、変わらずにいられたのかな……
あたしがこのまま一人暮らしでもして、こうやって顔を合わせなければ───実家で今まで通り、暮らせるんじゃないの?」
「それは……おかしいよ。あそこはトーコさんの家でしょ。
だから───試験終わったら、ちゃんと戻ってきなよ」
………あたしが、軽率に家を出たことで、逆に郁生くんに迷惑かかった…?