それ………


涙がたまったままのあたしの目が、まんまるに見開かれる。


ちっちゃい頃に、あたしが………

泣いていた郁生くん──郁ちゃんに、教えたおまじない……


そんな昔のこと、覚えてて────


「ほら、泣き止めー」


いちごみるくの飴の入ったほっぺたをツンツンっとつついた後、

またまた、ヨシヨシあたしの頭をなでる郁生くん。


………あんまり、揺らさないで。


もっと、涙出ちゃうじゃんか───



「ねえ……郁生くん……」




苦しい……苦しいよ……


本当は、離れていたくなんかないよ……


側に、いたいよ……


桜の夢を見た後みたいに、
海に行った時みたいに、

───抱きしめてほしいよ……




「……郁生くん……好き………」



涙と一緒に───ぽつり、こぼれ落ちた。