「……トーコさん……」
まだ、黙ったままのあたし。
「……あーぁ、もう……」
そのため息は───呆れた感じではなく、ひたすら優しくて。
そんな郁生くんに、ギリギリで堪えていた涙がこぼれ落ちた。
「……こらー、泣き虫娘」
涙の止まらなくなったあたしを、覗き込んでいた郁生くん。
ふと思い付いたように、
「───そうだ、いいものあったんだった」
ごそごそ、何かを探す音が聞こえて。
「ほら、トーコさん、あーん」
「………?」
言われるままに口を開けると、
───口の中に、コロコロっと、あまい味。
「これ……」
唇を押さえながら、慌てて顔を上げると、
───少し悪戯っぽい瞳で、郁生くんが笑った。
「“ちっちゃくてさんかくは、元気が出るおまじない”……なんでしょ?」
「!!」