私の夫となった晴虎殿は、久我家の四男。


歳は、今年二十になった私より、一回り近く上だとは思われるが、

一度聞かされたものの、興味がないので忘れてしまった。


“虎”とは名ばかり……などと言ってしまうと、さすがに失礼だろうけれど、

晴虎殿は滅多に口を開くことのない、寡黙で変わった男だった。


……何日かおきに、夕餉(ユウゲ)の時間に私のいる館へやってくる。


でも、愛想のないこの男は、別に何か言葉を掛けてくる訳でも、
私と向かい合う訳でもなく、

同じ部屋に腰を下ろし、黙って食事をする。


一応“正室”という立場上、仕方がないので、

私も同じ部屋で黙々と食事を口に運ぶ。


そして夜も更け───

夫婦である私達は、当然用意された同じ布団で眠りにつく。


晴虎殿は、それは寝付きが早くて、

私はようやく解放されたか……とため息をつきながら、

布団を忍び出て、格子からのぞく月を見上げる。