私も、真兄様も、
その突然の白昼夢に、ただただ呆然とするばかりだった。
けれど───……
ふいに、真兄様が私の名を呼んだ。
………今まで聞いたことのない、
低く、切ない声で…
私も……それに応えるように、
気が付いたら、真兄様の腕の中に吸い寄せられ、
…………いつしか、泣いていた。
突然還ってきた切ない想いに、胸が締めつけられる。
あの、初めて真兄様に逢った時に私の中を駆け巡った、
不可思議な想いの欠片達……
………あれは、私の記憶。
ずっと、忘れていたの。
でも……思い出してしまった。
桜が見せた幻は───私達の生まれ変わる前の姿。
私達は、前の世で身分違いの恋に身を焦がし、
しかし、結ばれることが叶わず、
この泉で心中し、悲しい最期を遂げた恋人同士だったのだ………