久し振りに二人きりでゆっくりと過ごすことが出来て、
私はいつも以上に、はしゃいでいたっけ。
長く続く桜の並木は、競い合うように美しい花を咲かせ、
私達は薄紅色に染まった丘や谷を馬で駆けた。
その帰り道……。
真兄様が、美しい桜の咲く泉へ行ってみよう、と提案してきた。
そこは、姉様が置いていった猫の小雪が迷い込み、その小雪を追って偶然見つけたそうだ。
私達は一旦馬を繋ぎ、歩いて泉まで行くことにした。
───それが、定められた運命だったのか。
ようやく辿り着いた泉のほとりで、
……私達は、桜の中に幻を見た。
そして、誰かの囁く声───
それは、
真兄様と初めて逢った、あの日と同じ………