探していた
逢いたかった
そんな、正体不明な想いの欠片が、グルグルと私の中を駆け巡る。
そして───それと共に、頭の中をかすめたのは、
美しく咲きほころぶ、淡い桜の薄紅色と、
誰かの囁く声……
『いつの日か、桜の下で逢いましょう……』
そんな不可解な感覚に囚われていた私。
兄上達は、幼い私が緊張し過ぎて言葉も出ないのかと心配して、
必死で和ませようとして下さったっけ。
優しい兄姉に囲まれて安堵した私は、深く考えるのはやめた。
その不可解な想いの正体を、思い知らされるのは、
まだ、もう少し先のこと───……