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その昔───とある藩に、年若い藩主がいた。


藩主はある時出逢った女性を見初め、

それは大層美しい奥方が、藩主の下に嫁いできた。


二人は仲睦まじく、

藩主は、人目もはばからない程奥方を大切にした。


お家大事なこの時代には珍しく、正室一人と心に決め、

側室は一切娶らなかった。


……やがて、奥方は二男一女をもうけた。


しかし、元々身体が強くはなかったため、

新たな命を身篭ると体調を崩し、床に臥しがちになった。


藩主は奥方の身を案じ、出産のため長きにわたる里帰りを許した。



そうして誕生したのが、二の姫……

───いわゆる、あたし真鍋柊子の前世……。



出産後も体調の思わしくなかった母上は、城に帰ることが出来ず、

まだ赤子だった私は、祖母や乳母に育てられ、

そのまま母上の里で、幼少期を過ごすこととなった。