───あたしが喋れる状態に戻るまで、どれ位掛かったんだろう。


泣くだけ泣いて………少しずつ平静を取り戻すと、


「ごめ……瑤子ちゃ……電話……」


ずっと電話口で待っていてくれた瑤子ちゃんに申し訳なくて、

あたしは、スンッ…と鼻を啜りながら、
途切れ途切れに謝った。


『……トコ……大丈夫…?』


「ん………泣いて、少しスッキリした」


『そっか……』


優しさを滲ませて、瑤子ちゃんが息をつく。


『なにか……あったの?』


「瑤子ちゃん……」


『ん……?』



─────胸が痛い。



郁生くんからの拒絶が、

私達が犯した罪が、

破ってしまった約束が、

彼を一人で死なせてしまった事実が、

………もっと遥か遠い昔に、
桜の下で交わした“誓い”が、


あたしの心に突き刺さり、

血が溢れ出しそうだ。



「瑤子ちゃん、……聞いてくれる?」


『………うん、なぁに?』


「長い長い─────昔話………」



そう………遥か遠い、


二つの約束…………