「……え? バイト? ……明後日からの?
……うん……いや、そんな具合悪い訳じゃないから……うん」
そんな会話が耳に入ってきて、───直感で分かった。
電話の相手……
多分───“杏崎未桜(カノジョ)”……
同じクラスなんだもん。
急に欠席した郁生くんを心配して、電話掛けてきたんだろう。
そう考えると、今一緒にいるのが、悪いことのように思えて。
……ふと浮かぶ、あのコの意志の強い瞳が、
まるで、あたしを責めているようで。
あたしは、とてもいたたまれない気持ちになった。
この非日常的な状況に、浮かれ過ぎていた。
久し振りに会話出来て、嬉しくて、
嬉しい気持ちが強すぎて、すっかり忘れていた。
………郁生くんに、彼女がいることも。
………あたしと郁生くんが、
“叔母”と“甥”であることも。