「───わっ! トーコさん、どうしたの?」


ポロッ…と涙をこぼしたあたしを見て、

郁生くんが慌ててる。


「あれ? ……えーと………え? なんで??」


「………ふ……ふふっ……ふ」


「……泣いてんの? ───笑ってんの?」


「………どっちだろーね」


そう言って、ケラケラ笑いながら、顔を上げたあたし。


そのおでこを、郁生くんが軽くこづいた。


「はぁー……マジ泣きされるかと、焦った」


「……意地悪するから、ちょっと焦らせようと思って」


「意地悪なんかしたっけ??」


「したした。───やだなぁ、自覚ないの?」


「えー?」


そんな会話をしていたら、

目の前に座っていたスーツ姿のおじ様に、

「ゴホンッ!」と咳払いで睨まれ……


あたしと郁生くんは、顔を見合わせて、クスクス笑った。