「………郁生くん!」



家ではうまく話せる自信がなくて、

────いつも通りの電車に乗り、乗り換え駅で待ってたあたし。


後の電車から降りてきた郁生くんの姿を見つけ、

声を掛けた……の、だけれど……



多分距離的には聞こえていたハズなのに、


郁生くんは振り返らずに、行ってしまって……。


「あ…あれ? …ちょっ……待っ…」


通勤通学の人混みに流されそうになりながら、
なんとか後を追いかける。



あれ……いない……


キョロキョロと辺りを見回して、姿を探す。



そして────えっ!?



あたしは、自分の目を疑ってしまった。



え……だって、……あの路線……


通学とは全く違う路線の階段を上がっていく郁生くんを、発見したのだ。


だって……学校…………なんであっち!?



あたしは本来乗るハズだった電車の乗換案内の電光掲示板と、

郁生くんが上がっていった階段を交互に見つめ───