「───……あの!」
パスケースを出そうと、改札前でモタモタしていたら、
後ろから呼び止められてしまった。
………想像していたより、少しハスキーな声。
サイドに後れ毛を垂らして、長い髪を編み込みでまとめてる。
襟のクラス章が目に入って、……郁生くんと同じクラスであることが見て取れる。
「……安西…クン、の………イトコさん、ですよね…?」
あたしから、一瞬たりとも目を離さずに、彼女が問う。
「イトコ……」
「同じ家に住んでるっていう……」
「あ…あー……そう、
───あたし、真鍋柊子と言います」
イトコ……という言葉に、一瞬戸惑ったものの、
……あぁそうか、と理解した。
あたしは以前“弟”と言ってしまったけれど、
それじゃあ、名字の違いを説明するのが、余計にややこしくなるのか……。