「あ……あー……そっか……ボタン……」


動揺を落ち着かせようとしているのか、

「はー」と息をつき、抱え込んだ膝の上にぽすんっ…と、顔をうずめてる。



そんな、郁生くんを見て………




「……内緒…って……」


「え?」


「この前の……」



さっきの郁生くんの声。


……あんな声、今まで聞いたことないよ。


いくら色恋沙汰にニブいあたしにだって、

───そこに込められた想いくらい、分かるよ……



「か……“彼女”なんじゃん!

なんだー、隠さなくったっていいのに!」


あたしは、急いで立ち上がりながら、


「心配……さ、しなくったって、じじばばには言わないから!

あ、ボタンつけ終わったらブレザー持ってくるね」


早口でまくしたてると、

目も合わせずに、そそくさと退散しようとした。