わがままを言って連れてきてもらった慶の場所
それは病院だった。
ほんとうは嘘なんだって、夢なんだって思ってたけど、慶と顔を合わせて実感した。
現実なんだって…
本当はね、やり直したかった。
慶とあたしの子供が居るんだってことあたしの言葉から伝えたかったなのに…
あたしは病室を飛び出した。
そして来たのは屋上
あたしは柵に捕まるように身を乗り出していた。
そんな時。
あたしは突然後ろに引っ張られた。
「ったく、んにやってんだよ。人騒がせな奴が。」
蓮…
「ごめん…」
蓮は何も言わずに柵にもたれ掛かる様に空を見上げていた。
「慶の奴、ガンでさー、引っ越す前には分かってたらしい。んで、隣町の大きな病院に入院してたんだってよ。でも時間が少ないからって戻ってきたらしい。なんでかわかるか?」
突然、蓮はあたしを見て問いかけてきた。
「え?」
「お前との約束を守るためだってよ。笑えるよな。でも、本気だったんだよ。それに…」
「それに?」
「引退の時に言ってたよ。俺にあいつを幸せにしてやることはできないから、俺が居なくなったらあいつを頼むって。ほんとバカだよな。病気だってのを隠して悪化したら嫌われるようにあっさり別れやがって。あいつはおおバカ者だよ。」
蓮はそう言ってまた空を見上げた。