「郁子、おはよう。」
午前8時17分
隣の席の橘さんが私に声を掛けた。
「おはよう、橘さん。」
苦手でも、ちゃんとお顔を見て挨拶するよ。だって、ちゃんと、挨拶してくれるから。
「郁子は今日もかわいいね。」
そう言われて、プリンプリンになってしまった、丸っこい私の髪を撫でた。
「.......。」
「課題やった?見せてあげようか?」
「いい。やってきたから。」
予鈴まで、残り8分の長いようで短い時間は橘さんとの会話でつぶされちゃう。
読みたい本あったのにな、ま、いっか。
でも、いつまで経っても、同じペースで同じ話しかしない橘さんが、苦手。
でも、撫でられたあとは、ちょっと嬉しくなるから、変なのって思う。