葉純にちゃんと突き放してもらえていたら、こんなふうにずるずると期待を引きずったりしなかった。


あんなふうに抱き合う二人を見て、こんなに落ち込むこともなかっただろう。


……なんて、後悔してももう遅い。





「……ごめん」


貴弘さんが見回りに戻っていって、再び葉純とふたりきりになった俺の口から無意識に出てきた言葉は、告白とは程遠いセリフ。


……どうやら、うぬぼれてたみたいだ。

あんな光景を見せつけられて、まっすぐな想いを貫けるほどには、俺、強くなかったんだな。

自分の強さ、過信してた。


「……邪魔したのってたぶん、俺のほう、だよな」


自分と葉純の間にだけは、自分勝手な嘘なんて吐きたくなかったのに。

……葉純のことで自分に恥じるようなことはしたくないと、思ったのに。


そんな自分自身への決意すら、まっとうできない。


「……え?」


戸惑ったような表情で訊き返してきた葉純の声が、今にも泣き出しそうなほど悲しく聞こえるのは、どうして。

泣きたいくらいに心が痛いのは、俺だけでいいはずなのに。