時間が傷を癒してくれるまで。

雫さんが貴弘さんや三浦を見ても痛みを感じないようになるまで。

それは、とてつもなく長い道のりのような気がした。


「……水原、どうして雫先輩といたの?」


突然逃げ出してしまった雫さんに驚きながらも、三浦は視線を雫さんの後ろ姿から離して、かたい声でそう訊いてきた。


「え?……いや、タオル忘れたから教室戻ったら、ここでバッタリ会った」


「そうなんだ」


「……泣いてたからほっとけなくて」


……嘘だ。

本当は、俺が泣かせた。

無神経に、貴弘さんのことなんて話題にあげたりしたから。


────だけどそんなことを言えるはずもなく、口から出てきたのは我ながら言い訳がましい言葉。



「……雫先輩は私が追いかけるから大丈夫。休憩に出たきり戻らないから心配で探しに来たんだ」

「そうだったのか」

「うん、だから、水原は部活に戻って。先輩に怒られちゃうよ」