雫さんのやってることは、むなしくて意味のないことだとは思う。

だけど、気持ちが分からないわけじゃなかった。


「……今日の秋祭り、三浦と行くんです」


少し俯きがちだった雫さんは、俺の言葉に顔を上げた。

まっすぐ、視線がぶつかる。


「誘った時から決めてた。告白、するって」


「告白……!?でも、そんなの」


「雫さんの言うとおり、あいつが貴弘さんと付き合ってるなら振られるんだろうけど」


雫さんは、さっきまでの泣きそうな顔とも、したたかに微笑む顔とも違う、本気で心配するような表情。


思わず苦笑が零れる。


「なんて顔してんすか」

「……水原くん、ふられたことないの?」

「え?」

「つらいよ。想像してるよりたぶん、ずっと」


自分が受けた傷の痛みを思い出したのか、表情を歪めた雫さんは、そのままゆっくり俯いた。