「葉純ちゃんにフラれたら、慰めてあげる。だから、そのときは水原くんも私のこと、慰めて」
「慰める、って」
「私の傍にいてくれたら、それだけでいいよ」
……傍に、いるだけで。
「そしたらきっと、お互いに好きになるから」
その自信が一体どこから来るのかはわからないけど、雫さんは当然のようにそう言った。
「そんなの、ただの傷の舐め合いですよ」
「わかってるよ。でも、私はそれでもいいの」
失礼だと思いながらもたしなめた俺の言葉に返ってきた雫さんの声にも、ためらいはなかった。
「貴弘くんのことは、ちゃんと諦めるよ。本当に大好きだから、彼の幸せのために、諦める」
間近にある雫さんのかたちのいい唇が、呟くように紡いだその言葉が、心に痛いくらい強く響いた。
そうなることを分かってこの人は、このタイミングで殊勝なセリフを吐いたんだ。
「……分かってます。もしも三浦が貴弘さんのことを好きなら、いつまでも自分の気持ちを引きずったりしません。それがあいつのためなら、ちゃんと気持ちを消してみせる」