雫さんはそこで一度言葉を切って、息を吸って気丈にも小さく笑う。

瞬間、目のふちに溜まっていた透明な雫が、ぽろりと頬を流れていった。


「そんなに簡単に割り切れるものじゃなかった。少なくとも、私には」

「そんなの」


────そんなの、当たり前ですよ。


そう言おうと思ったけど、雫さんがまだ言葉をつなげようとしているのを感じて、思わず黙る。


「自分の汚いところばかり見えて、本当に嫌になる」


「きたない……!?」


一体、どこが。

理解できなくて、戸惑う。


「汚いよ。……だって、あの日からちゃんと笑えないの。まっすぐ笑ってあげられないの。心の中から、憎い気持ちが溢れそうになるの」

「……雫さん」

「あんなに大好きで、可愛い後輩だったのに、こんなに簡単に変わっちゃうなんて、私、ひどいよね。こんなに憎いと思うなんて」


……憎い。

その生々しい感情にきっと、この人は自分で傷付いているんだろう。


「葉純ちゃんは全然悪くないって、分かってるのに」