「あ、りがと……ございます」



華奢なその手からハンカチを受け取る。


智沙先輩がまたさっきのベンチに座ったのを見て、私もその隣に腰を下ろした。



ハンカチを目に当てると、ひんやりして気持ち良かった。



しばらく沈黙が続いた。


氷はすぐに溶けたけど、生温いハンカチをいつまでも目に当て続けた。



ジリリと蝉の鳴く声だけがそこに響いている。



「そうだ、アドレスと番号教えておくから、何かあったらいつでも相談して来て」



スカートのポケットからゴソゴソとスマホを取り出す智沙先輩。



そして画面を開いて私に向ける。



「…………」



……



「あ、嫌だったらいいの。ごめんね」



無反応な私に智沙先輩は“気にしないで”と言葉を続ける。